オハナクリニック、医師の太田恵美(えみ)です。日本からサマースクールや、秋からの新学期にあわせて、引っ越してこられる方も多いと思います。今回は、米国における検診と予防接種に関して、お話させていただきます。

アメリカの医師は原則的には、CDCの定める予防接種のスケジュールにあわせて、接種を推奨しています。大きな違いは、B型肝炎とポリオ、おたふくの3種類でしょうか?

B型肝炎

米国では、B型肝炎は出生直後から接種は始まり、18か月までに、小児用3回の接種が終了になります。そのため、日本で、接種していないお子様は、6歳までに、3回接種が必要です。(大人用は、11歳から15歳のお子様に使用できますが、その際は2回接種で終了です。)

 

ポリオ

2012年8月までは、日本では生ワクチンを、アメリカ合衆国は不活化ワクチンを用いているという違いがありました。しかし、ワクチン由来のポリオ様麻痺患者の発生の予防のために、日本において、生ワクチンから不活化ワクチンへの切り替えが2012年9月1日に行われました。そのため、経口生ワクチンのみ、受けているという年長の子供さんも多いかもしれません。米国では、生ワクチンと不活化ワクチンの両方が接種されている場合、合計4回の接種が推奨されています。

 

おたふく

米国では、MMR:麻疹・風疹・ムンプス(おたふく)の三種混合ワクチンとして、満一歳以降に一回、4-6歳の就学前に、1回、合計2回の接種が勧められています。日本では、MMRワクチン(麻疹・風疹・ムンプスの三種混合ワクチン)は、1989年4月から接種が開始されました。ところが、MMRワクチンの接種後に、数百人から数千人に一人、ほとんどがワクチン由来のムンプスウイルスによると疑われる無菌性髄膜炎が発生することが明らかになり、1993年4月末にMMRワクチン接種の見合わせに至りました。日本には、おたふくかぜ単独のワクチンムンプスはありますが、任意接種です。そのため、日本から、渡米された子供さんは、MRワクチン(麻疹・風疹混合ワクチンは2回、接種していても、おたふくかぜワクチンだけ足りないケースが多く見られます。それでは、アメリカで、おたふくかぜワクチンのみ受ければよいと考えられる親御さんもいると思いますが、現在、アメリカでは、おたふくかぜワクチン単独では、製造されておらず、結局、MMRワクチン(麻疹・風疹・ムンプスの三種混合ワクチン)の接種が必要になる場合があります。そのため、日本からこられる方、おたふくかぜワクチンの任意接種を受けられる事をお勧めします。
ちなみに、大人になって、医療機関で働く場合等は、麻疹・風疹・ムンプスに免疫がある事を証明する必要があるので、働く前に3種混合の予防接種が必要になる事があります。また風疹は胎児の奇形、流産の原因になる事もあり、風疹に免疫のない妊婦さんは、出産後すぐに、MMRワクチンを接種します。そのため、MMRワクチンは子供さんだけでなく、大人になっても、なじみがある、予防接種です。

日本と米国は、予想よりも予防接種のスケジュールで違いがあります。時間に余裕のある方は、渡米前に可能ならば、医療機関に相談する事をお勧めします。

 

太田恵美 M.D., Ph.D. Emi Ota, M.D., Ph.D lekarna-slovenija.com.

長野県出身。米国家庭医学専門医。ハワイ州医師。香川医科大学(現香川大学医学部)卒業後、信州大学医学部外科学第2講座入局、外科医として、信州大学病院で、肺がん、乳がん、甲状腺がんなどの治療に従事する。その後、渡米し、がん研究の名門、メリーランド州、ジョンホプキンス大学医学部がんセンターで、研究員として、肺がんの臨床研究に従事する